【寄稿6】苦手意識の克服
夏にニンジンの種を蒔いた。
私はサンデーファーマーなので、週末しか畑に行けない。
発芽には湿潤な状態が必要ということで、天気予報を日々見つめ、雨が降る前の日に種を蒔いた。
予想以上に雨が降った。
畝が冠水し、種は流れ去った。
ニンジンは発芽すれば成功と言われている。
しかし、その発芽が難しい。
覆土を厚くし、種を固定することも考えたが、日の光も必要なのでそれもできない。
翌週、また、種を蒔いた。
また、予想以上に雨が降った。
また、種が流れ去った。
スーパーで簡単に手に入る「ニンジン」が、なぜ私には作れないのか。。。
種には種類があり、コーティング加工されているものがあると教えてもらった。
これだと蒔きやすく、流されにくいらしい。
今度は雨を避けて蒔いた。
残念。
日照りが続き過ぎた。
もういやだ。
しかし、まだ意地が勝った。
やけくそで種をもう一袋買った。
こどもが縁日で、当たるまで、くじを買い続けるようなものだ。
もう頭にきたので、適当に蒔き散らしてやった。
最後の一回という気持ちで、有給休暇を取って、水やりに勤しんだ。
頭にきているのだが負けたくない。
見かねて母が、水やりを手伝ってくれた。
一家総動員だ。
何とか発芽に至った。
しかし、種蒔きを適当にやったせいで、せっかく発芽した芽が偏ってしまった。間引きしたら数本になってしまった。
種は4袋買い、有給休暇を2日取得、母の助けまで借りてこの有り様だ。
二度とニンジンは植えない。
それどころかもう種蒔きからの野菜は育てないと固く誓った。
ニンジンのせいで、すべての種蒔きにすっかり自信を無くしてしまった。
この体験農園では、定期的に栽培講習会が開催される。
ここで良い話を聞いた。
種まきの時、瓶の底を使って蒔き穴を作ると良いとのことだ。
土が締め固められ、毛細管現象で、湿度が保持されるらしい。
「冬にニンジンを成功させたら、もう上級者」という話も聞いた。
「上級者!」
憧れの響きだ。
私の誓いは、よく変更する。
1月に蒔こう!
しかし、1月の種蒔きは、さすがに対策が必要だ。
土づくりを入念に行い、黒マルチを掛け、栄養ドリンクの瓶底で蒔き穴を開けた。
種は当然、コーティング種。
そのあと、不織布を掛けた。
種たちも暖かそうだ。不織布が羽毛布団に見える。
その上にさらに透明ビニールで、トンネルを作った。ビニールハウスが素人の私でも出来た。
今回は、一発で発芽成功!
一番うれしいのは、この作戦勝ちした瞬間だ!
偶然、上手くいったのではない。今回は、ニンジンをコントロールできた!
最近よく思う。
なんでもそうだが、やってみて初めてその難しさが分かる。
農業関連の手ほどきは、本やインターネットでたくさん手に入る。
しかし、その通りやっても、自分の畑でうまくいくかは別の話だ。
農業を生業としてやっておられる方の知識や工夫は、尊敬に値する。
しかし、難しい分、一面に芽生えたときは、本当に感動する。芽から後光が差しているいるようだ。
次は、娘のため、イチゴを成功させたい。
夏には、トウモロコシだ。
野菜作りは、経験がものをいう。
失敗することで、少しつつ野菜に近づいていっているように思う。
次から次へと挑戦が続く。
いい趣味を見つけてしまった。